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『神様のカルテ』シリーズのコーヒーにまつわるエピソード

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※ネタバレありの記事ですのでご注意ください。

『神様のカルテ』シリーズではコーヒーを飲むシーンがよく出てきます。
印象的なエピソードを中心に紹介したいと思います。

目次

  1. 劇薬「砂山ブレンド」
  2. 病棟コーヒー事件
  3. 缶コーヒー
  4. 様々な人の入れたコーヒー
  5. イノダコーヒのアラビアンパール
 

1.劇薬「砂山ブレンド」

冗談かと思えるほどの多量のコーヒー粉末を溶かし、えらく苦くしておきながら、そこに今度はたっぷりの砂糖を放り込む。苦いのか甘いのかよくわからない濃厚な砂山ブレンドのできあがりだ。

(『神様のカルテ』より)

『神様のカルテ』で最初に登場するコーヒーは砂山次郎が入れるインスタントコーヒー「砂山ブレンド」です。次郎の大好物であるこのコーヒー、一止によると徹夜明けで飲むと舌がぴりぴりし、まともな判断力があるときには飲めたものじゃないようです。

一杯飲めば、三日三晩の過労も吹き飛ぶ劇薬であるが、まれになけなしの健康まで吹き飛ばされることがあるから要注意である。

(『神様のカルテ2』より)

『神様のカルテ2』では次郎が自若先生に砂山ブレンドを出しています。一止が止めようとしたものの味覚にはうるさくないからと飲んだ自若先生、口癖の「問題ない」ではなく「問題がある」とコメントしています。
『神様のカルテ3』ではこれ以降自若先生が次郎を畏敬と恐怖の混ざった目で見ていることが述べられています。また、次郎がコーヒーを淹れようとするのを自若先生は即座に断っています。
ところがこの砂山ブレンドを美味しいと言って飲む人も存在します。『神様のカルテ3』より登場する小幡先生です。

「このまえ砂山先生においしいコーヒーの作り方を教わったのよ。林檎のあとのこの一杯がたまらないの」

(『神様のカルテ3』より、小幡先生の言葉)

『神様のカルテ3』では一止が砂山ブレンドを淹れるシーンも見られます。大晦日、次郎に取って本庄病院での最後日の夜のことです。そこにいたのが次郎と小幡先生という砂山ブレンド愛飲者のふたりだったということもあるでしょうが、一止から次郎へのはなむけの気持ちも込められていたのではないでしょうか。
大学病院に異動してからも砂山ブレンドは健在で、『新章 神様のカルテ』でも次郎はビーカーに入れて一止に出しています。

2.病棟コーヒー事件

「そう言えば、陽子から聞いたぞ、病棟コーヒー事件。とうとうやらかしたな、一止」

(『神様のカルテ2』より、砂山次郎の言葉)

私はすぐそばの自販機でコーヒーを二つばかり買い込んで一方を辰也に手渡すと、辰也は苦笑まじりに答えた。
「もう勘弁してくれよ」
「何がだ?」
「コーヒーは飲むものだ。かけるものじゃない」

(『神様のカルテ2より』)

『神様のカルテ2』で本庄病院に赴任した進藤辰也でしたが、どこかに線を引いたような冷たい対応が垣間見え一止や次郎を困惑させます。辰也の態度には各部署からのクレームも来ており、そんなある日、患者への対応を巡って看護師達と衝突してしまいます。
言い合っても埒が明かないと判断した一止は「飲んでいたコーヒーのカップを辰也の頭上で回転させる」、つまり、頭からコーヒーをかけるという行動に出ました。
看護師達はあっけにとられていましたが、一止自身はもちろんコーヒーをかけられた辰也も動じていません。いささか乱暴な手ではありましたが、このことをきっかけに辰也の振る舞いも変わっていきます。

この病棟コーヒー事件には続きがあります。
古狐先生の癌が判明し疲れた様子の一止に、今日は早く帰れと声をかける辰也。動揺のためか正常な判断が出来ない一止は強情を張ります。
そこで辰也が取った行動が「手に持っていた缶コーヒーを一止の頭上でひっくり返す」…一止が辰也の目を覚まさせるために行ったことを、今度は辰也が一止に対して行ったのでした。コーヒーにはコーヒーを、とでも言いましょうか。
頭からコーヒーをかけるのは東西直美の言うように普通の人のすることではありませんが、一止と辰也の友情が根底にあるからこそのエピソードと思います。

また、よくないことが続き病棟の風向きが悪い、と言う東西に対して一止は新人看護師達にコーヒーをかけて回ろうかという冗談を飛ばしています。東西によると後始末が大変とのこと、確かに床だけではなく椅子や机もと考えると掃除するのは面倒でしょうね。

3.缶コーヒー

『神様のカルテ』シリーズには缶コーヒーもちょくちょく登場します。

和解のしるし

『神様のカルテ3』で診療に関して衝突した外村さんと小幡先生。和解に際して小幡先生は救急部に林檎を贈り、外村さん「お礼代わりに渡しといて」と一止に缶コーヒーを預けました。林檎とコーヒーでやり取りするというまどろっこしさはふたりらしいと思います。

まるでビールのよう

大狸先生は笑いながら悠々と缶コーヒーを傾ける。うまそうに飲むその姿を見ていると、ただの缶コーヒーが生ビールに見えてくるから不思議だ。

(『新章 神様のカルテ』より)

この感じだと大狸先生の手にかかればどんな飲み物でも生ビールに見えるのではと思います。というより一止の思考が不思議なのでしょうか。

4.様々な人の入れたコーヒー

栗原榛名

「ああ、あなたが世界で一番おいしいコーヒーを淹れてくれるという栗原先生自慢の奥さんですか。いつもいつも噂は聞いていますよ。お会いできて光栄です」

(『神様のカルテ2』より、古狐先生の言葉)

御嶽荘ではよく榛名がコーヒーを入れています。キッチンが共同であり水が必要な際は下の階まで行かなければならないため、一止は自室「桜の間」でコーヒーを飲むなんて考えたこともなかったそうですが、榛名は豆を挽くところから手際よくこなします。後述のイノダコーヒの豆を挽いている姿も見られます。
一止に取って榛名のコーヒーを飲むのは心休まる瞬間なのでしょうね。
また『神様のカルテ2』で一止と榛名は冬に美ヶ原高原、夏に御嶽山を訪れていますが、これらのときにも榛名は水筒に入れたコーヒーを持ってきています。

東西直美

自宅=御嶽荘では榛名がコーヒーを入れていますが、職場=本庄病院で一止にコーヒーを出してくれているのが東西直美です。
東西が一止にはじめてコーヒーを出したのは『神様のカルテ0』、一止が本庄病院に勤めはじめて数か月のときのことです。

「いえ、とてもおいしいですね、こんなおいしいコーヒーは初めてです」
(中略)
「あんまり褒めすぎないでください。褒められるの慣れていないんですから。また時間があるときは、淹れますね」

(『神様のカルテ0』より、一止と東西のやり取り)

その後このふたりのやり取りが病院中の噂となった、と一止は大狸先生から突っ込まれています。
普通のインスタントコーヒーも東西が入れると美味しくなるようで、「私が淹れるコーヒーとは全く別の代物」「同じインスタントでありながら、次郎は限りなくまずく、東西は見事な味わいに作り上げる」と一止は評しています(砂山ブレンドと違うのは当然とも思いますが)

『神様のカルテ0』では「こんなおいしいコーヒーは初めて」と言っていた一止でしたが、榛名との出会いと結婚を経て『神様のカルテ3』のときには東西のコーヒーは「世界で二番目にうまいコーヒー」になっています。

水無陽子

本庄病院で一止にコーヒーを出すのは大抵東西ですが、『神様のカルテ』では水無陽子が出したこともあります。
痛みに苦しむ末期癌の患者を目の当たりにし「なんとかならないんですか」と一止に厳しい視線を向けた水無。その後東西から一止が一生懸命対応していたことを聞き、自分が勝手なことを言っていたと謝るシーンです。
一止の感想は東西のコーヒーにはだいぶ及ばないとのことで、恐らくごく普通に入れられたインスタントコーヒーだったのでしょう。

屋久杉

「人生を続けて行くのに、必要なものが二つある。知っているか?」
(中略)
「前に向かって歩く足と、一服したときに飲むうまいコーヒーだ。少なくとも後者の質は、私が保証しよう」

(『神様のカルテ3』より、一止の言葉)

屋久島に行った屋久杉が山岳ガイドの人から最初に教わったというのがコーヒーの入れ方でした。インスタントであってもいい味が出るとのことで、一止は(榛名のコーヒーには及ばないと思いつつも)その美味しさを認めていました。

双葉佐季子

『新章 神様のカルテ』では双葉が一止にコーヒーを出しています。本庄病院における東西のポジションと考えられます。
双葉が一止に出すコーヒーについては、大きなフラスコをバーナーにかけている様子が描かれています。更にビーカーを使って飲んでいるため、コーヒーを入れているのに実験をしているような図ですね。
私もビーカーでコーヒーを飲んでいる人を見たことがありますが、普通のビーカーだと熱くて持つのが大変ではないでしょうか。
…と思ったら世の中には取手付ビーカーなるものが存在するそうです。

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リカシツオンラインSHOPではいろいろな種類の取手付ビーカーだけでなく、ビーカーワイングラスなんてものも販売されています。

5.イノダコーヒのアラビアンパール

「いつもはコーヒーはブラックだ。しかしこのイノダのアラビアンパールには、たっぷりの砂糖とミルクが合う。まことにクラシカルな名品だ」

(『新章 神様のカルテ』より、一止の言葉)

缶コーヒーやインスタントコーヒーだけでなくイノダコーヒもしばしば登場します。特にアラビアンパール(アラビアの真珠)が好きなようで、上述のシーンだけでなく『神様のカルテ』『神様のカルテ3』でもアラビアンパールにたっぷりのミルクを入れて飲む様子が見られます。
また『神様のカルテ3』で一止の誕生日に東西が入れたのもイノダコーヒでした。種類は特に名言されていませんが、一止は一口飲んでイノダコーヒだと分かっています。

★『神様のカルテ』シリーズに関する記事はこちら→夏川草介 著『神様のカルテ』シリーズに関する記事の一覧

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