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舞台と原作の比較:ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ ~足ながおじさんより~』

投稿日:2019-03-09 更新日:

目次

  1. 作品情報
  2. 舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?
  3. 舞台と原作の比較
 

1.作品情報

舞台:『ダディ・ロング・レッグズ ~足ながおじさんより~』

製作:東宝
観劇:2017年11月@シアタークリエ

原作:『あしながおじさん』(Daddy-Long-Legs)

著者:ジーン・ウェブスター
『あしながおじさん』の日本語訳はたくさんありますが、私が読んだのは坪井郁美さん訳のものです。

『あしながおじさん』はほぼ全編が主人公の手紙で綴られる作品です。
この手紙の微妙なニュアンス、ちょっとした言葉遣いの違いや感情など、主人公の姿が生き生きと魅力的に描かれた素敵な訳となっています。
また、作者のウェブスターさんご本人による挿絵もちゃんと入っていておすすめです。

ちなみに(こちらは読めていないのですが)ミュージカルの訳詞を書かれた今井麻緒子さんによる訳もあります。

2.舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?

私自身は舞台のことを知ってから原作を読み、そのあと舞台を観ましたが、「原作を先に読んだほうがよい」と考えます。

こちらの作品については迷わず原作先を推します。
そもそも舞台の情報を得るより前に原作を読みたかったと思います(子供の頃に読んでいたのでしょうか…いや記憶にない…)

理由:舞台は最初からネタバレしているようなもの

この一言につきます。
原作の『あしながおじさん』には読み進める中で分かっていくある秘密がありますが、この秘密は舞台でははじまる前からほぼ分かってしまいます。
原作は主人公がどこに向かっていくのかにわくわくする作品でもありますが、舞台は予想される結末にどう向かっていくかを楽しむ作品だと思いました。

3.舞台と原作の比較

» 以下ネタバレあり

※登場人物の名前表記は舞台に準じたジルーシャとジャーヴィスを使用します。

あしながおじさんの原作はジルーシャの手紙の形でストーリーが進んでいきます。
彼女の手紙からは、充実した大学生活、はじめての体験の数々、友人達との交流、そしてジャーヴィスとの出会いや彼に惹かれていく姿を見ることが出来ます。
ジルーシャに取って家族のような存在であるあしながおじさんですが、ジルーシャ本人だけでなく読者からもその姿は見えません。読者はジルーシャと一緒にあしながおじさんの姿を想像し、いつか会える日を心待ちにします。

ジルーシャがあしながおじさんとの対面を果たすのは物語のラストです。
自分の経歴ゆえにジャーヴィスからのプロポーズを断ってしまったジルーシャ。苦しい思いを綴った手紙に対して、あしながおじさんからの「会って話を聞く」との返事。
彼女が訪ねた先に待っていたのはジャーヴィスその人…ジルーシャだけでなく読者もまたこの展開に驚くとともに、幸せな気持ちになれる結末です。

一方舞台の登場人物はふたり。ジルーシャとジャーヴィスのみ。
私はこの舞台の設定を知ってから原作を読んだため、あしながおじさん=ジャーヴィスであると簡単に察することが出来てしまいました。
知らない状態で原作を読んでいたらどのように感じただろうか、そう考えるととてももったいないことをしたと思います。

舞台ではジルーシャに興味を持ったジャーヴィスが、あしながおじさんであることを隠し、ただのジャーヴィスとして会いに来ます。
一緒の時間を過ごす中で惹かれていくふたり。あしながおじさんであることを隠している負い目を感じるジャーヴィス。「知らぬはジルーシャばかりなり」の状態です。
あしながおじさんはどんな人なのかというどきどきはありませんが、舞台は舞台で素晴らしい作品になっています。
なんてかわいらしいふたりなのでしょう。聡明で生き生きとしたジルーシャ、時に無邪気で、時に大人気ないジャーヴィス。
手紙の中だけではなく実際にジャーヴィスが登場するので、彼の気持ちや苦悩がきちんと描かれるのもポイントと思います。

井上芳雄さんのジャーヴィスはとても素敵ですし、坂本真綾さんのジルーシャは本当にぴったりだと感じました(個人的にはジルーシャの手紙を読んでいて真綾さんのエッセイを思い出しました)

(2020.05.09追記)
★真綾さんのエッセイの紹介→坂本真綾さんのエッセイの話①『アイディ。』

あしながおじさん=ジャーヴィスなのが丸分かりであること以外は原作も舞台も大きくは変わりません。
原作のほうがジルーシャのサクセスストーリー感が強く、舞台は「A new musical romance」と銘打たれている通りふたりの恋物語がメインのイメージでしょうかね。

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★他の作品についてはこちらから→舞台と原作の比較:舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?

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