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坂本真綾さんのエッセイの話①『アイディ。』

投稿日:2020-05-09 更新日:

夢が叶ったはずなのに、なんで幸せじゃないんだろう。

(本文より)

主に声優、歌手として活躍されている坂本真綾さん。ご自身の楽曲の作詞はもちろん、他のアーティストへの作詞提供もされていますが、詞以外の文章も魅力的です。
ここでは真綾さんのエッセイの紹介として『アイディ。』を取り上げます。

目次

  1. 『アイディ。』概要
  2. 舞台
  3. ひとり旅
  4. 『あしながおじさん』
 

1.『アイディ。』概要

坂本真綾さんのウェブサイトに掲載されているエッセイ(『I.D.向上委員会』および『the id』)の一部と書き下ろしの文章をまとめた一冊です。
18歳から25歳の間に書かれた文章だそうで、児童劇団に入った頃の話から、学生時代のこと、仕事はもちろんプライベートも含めてその時々で感じたことが綴られています。

坂本真綾 Official web site [I.D.]

2005年に単行本が、そして2011年に星海社より文庫版が発売されています。文庫化にあたって新たに数ページの後書きが書き下ろされています。
(話はそれますが、星海社文庫にはスピン(栞紐)が付いています。新潮文庫などに付いているスピンとは趣が異なり、星海社のロゴが入った青いリボンになっています)

2.舞台

『アイディ。』の中から気になった部分をいくつか紹介したいと思います。

まずは「舞台」。真綾さんは声優や歌手としての活動以外に舞台にも出演されており、2003年から2009年までは『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役を務めていました。
『アイディ。』が発売されたのは2005年、まさにエポニーヌだった頃であり、「『レ・ミゼ』に出会ってしまった。」という20ページ程の文章が書かれています。

オーディションから稽古(娼館のシーンなどの稽古風景も垣間見えます)、劇場入りまで、『レ・ミゼ』について語られたこの20ページからは苦しみや葛藤が見て取れます。冒頭の一文もこの章から引用しています。
夢だったエポニーヌ役なのに、いや、夢だったからこそのつらさなのだと思います。
苦しみながらも本番を迎え、そして一度きりではなくその後もエポニーヌを務めた真綾さん。私が『レ・ミゼラブル』をはじめて観たのは2011年、彼女のエポニーヌを観ていないことが残念でなりません。

3.歌

歌手活動については「歌の足あと。」として、2005年までに発売された8枚(シングルコレクション、ミニアルバム含む)のアルバムに関する文章が収められています。
『DIVE』を作っていた「18歳」にまつわる思い出、『少年アリス』が作られた際の様子、そして真綾さんが歌に向き合う姿勢…歌とはどんな存在で何のために歌っているのか、といった内容が書かれています。
自分とは違う何かになる演技の世界、一方で自分をとことん見つめる歌の世界。「ふたつの表現の場があることで、私の心はずいぶん救われてきた」と真綾さんは綴ります。

4.ひとり旅

本書の最後に綴られているのが「急に思い立ってひとり旅。休みは1週間だけとることができた。」と題されたロンドンでのホームステイの話です。
なんかもやもやとして、現状を変えたくて、旅に出たくなる気持ちは分かります。だからと言って急に海外ホームステイに行けるかというとそれは難しいですが…
英語を話せるようになるにはとにかく話すこと。上手く伝えられないから、難しいからと諦めないこと。そして続けること。英語に限らず、人生において大切なことなのだと思います。

真綾さんのステイ先はとても素敵なところだったんだろうなというのが文章から伝わってきました。そしてこの24歳のひとり旅は、『from everywhere.』という別のエッセイに収められた次の旅にも繋がっています。

(2020.05.30追記)
★『from everywhere.』の紹介はこちら→坂本真綾さんのエッセイの話②『from everywhere.』

5.『あしながおじさん』

真綾さんの『レ・ミゼラブル』以外の舞台として、同じく東宝のミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ ~足ながおじさんより~』が挙げられますが、私が原作の『あしながおじさん』を読んだときに思い出したのがこの『アイディ。』でした。

個人的にはジェルーシャ(舞台ではジルーシャですね)の手紙には真綾さんのエッセイを彷彿とさせるものがある(真綾さんのエッセイがジルーシャの手紙を彷彿とさせる、と言うべきでしょうか)と感じます。
『アイディ。』はところどころに真綾さんによるイラストが入っている点も影響していると思います。

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