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坂本真綾さんのエッセイの話②『from everywhere.』

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――帰る場所を
ずっと探してたけど
それはすぐそばにあった。

(帯より)

坂本真綾さんのエッセイの紹介第二弾として『from everywhere.』を取り上げます。
★第一弾はこちら→坂本真綾さんのエッセイの話①『アイディ。』

目次

  1. 『from everywhere.』概要
  2. 旅の足跡
  3. 旅行記として
  4. 楽曲『everywhere』の誕生
  5. 白尾悠 著『いまは、空しか見えない』
 

1.『from everywhere.』概要

37日間にわたるヨーロッパひとり旅が綴られた一冊です。時期としては2009年3~4月の『レ・ミゼラブル』地方公演のあと、5~6月にかけてのことのようです(『レ・ミゼラブル』は帰国後の2009年秋に東京公演があり、真綾さんはそれを最後にエポニーヌ役を卒業されています)

2011年に講談社より単行本が、2013年に星海社より文庫版が発売されています。文庫化にあたって新たに2ページの後書きが書き下ろされています。

2.旅の足跡

成田空港から飛び立ち最初に降り立ったのはフランス・パリ。そして飛行機でチェコ・プラハに、新幹線のような電車でオーストリア・ウィーンに、夜行列車でイタリア・ベネチアにと移動していきます。イタリアではローマフィレンツェミラノと複数の都市を訪れていて、途中ヴァチカン市国にも立ち寄っています。
そしてまた飛行機でスペイン・バルセロナポルトガル・リスボンと巡り(もともとはバルセロナから陸路でマドリッド、リスボンと巡る予定だったものを1日でも早くリスボンに向かうことにしたとのこと。真綾さんに取ってこの判断は正解だったようです)、リスボンでスタッフと合流して撮影を行った後、再度パリという道程です。
(地名は『from everywhere.』内の表記に準じて記載しています)

観光名所に立ち寄るのはもちろんですが、特別なことをせずにただ街を歩く、美味しいものを食べる、部屋でゆっくりと過ごす、といった時間を大切にする様子が綴られていました。
ところで作品紹介には「ヨーロッパ8か国を巡る」と書かれているのですが、7か国しかないような…どこか見落としたでしょうか。

3.旅行記として

単純ですが『from everywhere.』を読むとヨーロッパに行ってみたくなります。いくつか気になったものを紹介します。

ストラホフ修道院

1143年に建てられたチェコ・プラハの修道院です。世界一美しいとも言われる図書室「哲学の間」と「神学の間」があり、真綾さんはここに出逢えてよかったと綴っています。
なお公式ウェブサイトには「3D TOUR」のページがあり、「哲学の間」「神学の間」の本がたくさん並んでいる様子や天井のフレスコ画を見ることが出来ます。その場の空気や匂いを感じることは出来ませんが、厳かな雰囲気の一端が感じられます。

Royal Canonry of Premonstratensians at Strahov

オーストリア国立図書館

ウィーンのホーフブルク宮殿の中にあり、こちらもまた世界一美しい図書館と言われているそうです。

Start page - Österreichische Nationalbibliothek

ホーフブルク宮殿は長きにわたりハプスブルク家の居城でした。18世紀にはマリー・アントワネットが誕生、19世紀には皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と皇后エリーザベト(エリザベート)が暮らしていた場所です。

アプフェルシュトゥルーデル

ウィーンの「カフェ・セントラル」で食べたというお菓子。ドイツ語でアプフェル(apfel)は林檎、シュトゥルーデル(strudel)は渦巻きを意味し、林檎を薄い生地で巻いたアップルパイのような食べ物です。
「カフェ・セントラル」のウェブサイト内、「Pâtisserie」のところにこのアプフェルシュトゥルーデルの写真も載っていました。

Café Central

ロカ岬

岬は、天国かと思うほど美しいところだった。

(本文より)

ポルトガルにあるユーラシア大陸最西端の岬です。断崖絶壁からの眺めが素晴らしい場所で、ポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイスが詠んだ詩の「ここに地果て、海始まる」という一節が刻まれた石碑が建っています。
有料の「ユーラシア大陸最西端到達証明書」が発行されており、日本語の説明文も書かれているそうです。

サン・ジョルジェ城

ポルトガル・リスボンにある城で、その歴史は紀元前にまで遡るそうです。
真綾さんの今回の旅の終着地とも言える場所で(実際はこのあとパリの観光をされていますが)、ここで『Remedy』の歌詞に触れています。

“丘の上から見渡してたら 懐かしくて泣きそうになった”

(本文より、『Remedy』の一節)

サン・ジョルジェ城は高台に位置するためリスボンの街を見下ろすことが出来ます。

Home - Castelo de São Jorge

4.楽曲『everywhere』の誕生

真綾さんのはじめての作詞作曲曲(作詞はそれまでもされていましたが作曲が初でした)であり、15周年の記念に発売されたベストアルバム『everywhere』に収録された楽曲『everywhere』(楽曲名とアルバム名が一緒なので書き分けが難しいですね)。この曲が生まれたのが旅の18日目、ローマで宿泊したB&B「club KOTOBUKI」でのことです。
『from everywhere.』には真綾さんが旅の途中で撮影された写真が載っており、その中にこの曲が生まれたKOTOBUKIのピアノの写真もあります(文庫版の場合。単行本でどうなっているかは分かりません)。
歌詞については旅の22日目にはほぼ完成していたそうです。冒頭の一文は帯よりの引用としましたが、『everywhere』の歌詞の一部でもあります。

『from everywhere.』には真綾さん作詞の『I.D.』という楽曲の歌詞が記載されており、この曲が生まれた山中湖とKOTOBUKIのあたりの雰囲気が似ていると書かれています。
アルバム『everywhere』が『I.D.』ではじまり『everywhere』で終わる(2枚組のCDなので正しい表現ではないかも知れませんが)というところからも2曲の繋がりを感じます。
またアルバム『everywhere』のブックレットにはspecial thanksとしてKOTOBUKIの名前も載っています。

5.白尾悠 著『いまは、空しか見えない』

全く関連はありませんが、白尾悠さんの『いまは、空しか見えない』を見たときに『from everywhere.』の文庫を思い出しました。

リュックを背負ったショートカットの女性、紙面の向こうに伸びていく道。写真の背景がぼやけているところや、上部が写真で下は白いところまで、表紙の雰囲気がよく似ています。と言っても色合いは違い、『from everywhere.』からは爽やかで前向きな光を、『いまは、空しか見えない』からはノスタルジックなものを感じます。

ちなみに『from everywhere.』の単行本はまた違った表紙になっています。

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