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舞台と原作の比較:ミュージカル『マリー・アントワネット』

投稿日:2019-03-07 更新日:

目次

  1. 作品情報
  2. 舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?
  3. 舞台と原作の比較
 

1.作品情報

舞台:新演出版 ミュージカル『マリー・アントワネット』

製作:東宝
観劇:2018年10月@帝国劇場

原作:『王妃マリー・アントワネット』

著者:遠藤周作
出版社:新潮社

2.舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?

私自身は舞台を観てから原作を読みましたが、「原作と舞台のどちらが先でもよい」と考えます。

理由1:史実を基にした話

フランス王妃だったマリー・アントワネットを知らない人はほぼいないでしょう。
その美貌、浪費癖、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」(実際は彼女の言葉ではないらしいですね)、フランス革命、亡命に失敗、断頭台に消える最期。
歴史上の人物を中心とした作品ですから、基本的にあっと驚く展開というのはありません。
どんなに助かってほしいと思ってもマリーが亡命出来ることはなく、最後には処刑されてしまうのです。

理由2:ストーリー展開の分かりやすいミュージカル

史実が元なのでそもそも大まかな流れは分かっていること、歌と台詞から流れが理解しやすいことから、予習しなくても話が分かるかと思います。

理由3:マルグリットの立ち位置の違い

原作オリジナルのキャラクターとして、マルグリット・アルノーがいます。
この『マリー・アントワネット』はマリーとマルグリット、フランス革命に巻き込まれていくふたりのMAの人生が交錯するところが史実とは異なります。
ただこのマルグリットの立ち位置や振る舞いが原作と舞台では異なるため、どちらが先でも影響はないと考えます。

3.舞台と原作の比較

» 以下ネタバレあり

マルグリットの立ち位置の違いとして、個人的に一番大きかったのは、原作にはマリーとマルグリットが腹違いの姉妹という設定がない、ということです。
ふたりの顔がよく似ているという描写がされていたので最後に姉妹と分かる展開かと思っていたらそんな話は全く出てきませんでした。
原作ではマリーとマルグリットの関わりもほとんどありません(小説はそれでも十二分に面白いですが、やはり舞台となると全く関わらない訳にはいかないのでしょうね)。舞台では最後にふたりが心を通わせる描写がありますが、原作ではそれもなし。
マルグリットが反逆罪の証拠を隠していた、からの新聞を委託した際の契約書の提出というどんでん返しの展開も舞台のみでの驚きです。

マルグリットが革命へ向かっていく背景が貧困であることに違いはありませんが、彼女のマリーへの想いには少し違いがあるのかなと思います。
原作のマルグリットは自分と年の近い少女なのに自分とは何もかも違う恵まれたマリーが憎い。自分の置かれた境遇もマリーのせい。
一方、舞台のマルグリットはマリーに民衆の貧しさを訴えるシーンがあります。返されたのは嘲笑。マリーをはじめとした貴族達に憤りを覚えていきます。

あとフェルセン伯爵の立ち位置も微妙に違いますね。
ひたすらにマリーを想い続けた人で、マリーもまたフェルセンを想っているというのは一緒ですが、原作ではあくまでも心の繋がりのみという感じ。舞台のほうが史実に近いようですね。

もちろん原作のほうが描かれている内容が多いです。
マリーがフランスに嫁いだところからはじまり、華やかな宮廷生活、ルイ16世への想い、忍び寄る革命の影、そして何度でも何度でもマリーを救おうとするフェルセンの姿。
マルグリットの歩みは波乱万丈です。娼婦としての生活、サド侯爵やカリオストロ、アニエスといった実在の(あるいは実在の人物をモデルにした)人物との関わり。
舞台を観た後でも、フランス革命のことを知っていたとしても、ふたりのMAの壮大な物語として楽しめる作品だと思います。

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