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舞台と原作の比較 番外:映画『イニシエーション・ラブ』

投稿日:2019-03-10 更新日:

「舞台と原作の比較:舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?」の番外編として映画『イニシエーション・ラブ』を取り上げたいと思います。

目次

  1. 作品情報
  2. 映画を観る前に原作を読んだほうがいいか?
  3. 映画と原作の比較
 

1.作品情報

映画:『イニシエーション・ラブ』

監督:堤幸彦
出演:松田翔太、前田敦子 他

原作:『イニシエーション・ラブ』

著者:乾くるみ
出版社:文藝春秋

2.映画を観る前に原作を読んだほうがいいか?

私自身は原作を読んでから映画を観ました。
「必ず2回読みたくなる」「あなたは必ず2回観る」と言われたこの作品。最初の1回の衝撃は超えられないので、映画と原作の両方に触れる場合の順番は非常に悩ましいですが、強いて言うなら「原作を先に読んだほうがよい」と考えました。
もちろん映画が優先の(原作は別に読まなくてもいいという)場合は予備知識なしで映画を観ることをおすすめします。

理由1:80年代を舞台とした映画

オチを知った上で映画を観る or オチを知った上で原作を読む、楽しめるのは前者かなと思います。
主人公達と同年代の方は当時を思い出して懐かしい気持ちになれるのではないでしょうか。私自身は当時(80年代後半)のことをよく知らない世代のため、当時のファッションや髪型を新鮮な気持ちで観ていました。
もしかしたら今の中高生だと固定電話すらあまり馴染みがないかも知れませんね。家族の人が出たらどうしようと思いながら電話を掛けるどきどき感も、電話の向こうで無言の相手が誰だか分からない状況も、今はだいぶ減りました。

理由2:登場人物の魅力

女性陣ふたりは文章より映像のほうが魅力的だと思いました。
前田敦子さんのマユはかわいいし、木村文乃さんの美弥子は美人で大人っぽい。
私自身は上述の80年代の風景と合わせて、このふたりが動いている姿を楽しみました。

理由3:映像化出来るのか?

» 以下ネタバレあり

原作は叙述トリックを含む恋愛小説です。最後の2行でこれまで読んできた物語が一気にひっくり返されます。
これは文章だからこそ出来る表現であって、絶対に映像化は出来ないと思っていました。
私がオチを知った上で映画を観た一番の理由は、この作品をどうやって映画にしたのかを知りたかったからです。
ちなみに映画は最後の5分ですべて理解出来る構成。原作は文庫版収録の大矢博子さんによる解説が理解の助けになります。

(「叙述トリック」という情報自体がネタバレと思いますので、この項はネタバレ扱いにしました)

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で、どう映像化したのか

» 以下ネタバレあり

ふたりのたっくん、鈴木辰也と鈴木夕樹は別の俳優さんでした。
辰也が予告段階から明らかになっていた松田翔太さん。夕樹は森田甘路さん(クレジットは亜蘭澄司(=アラン・スミシー))。
Side-Aで描かれるたっくん(=鈴木夕樹)は冴えない男。ぽっちゃり体形。マユと出会うことで流行りの服に身を包み、髪型を変え、車の免許を取り、自分を少しずつ変えていきます。
そして迎えたクリスマスイブ、幸せいっぱいのふたりに通りすがりのカップルが「釣り合っていない」とひそひそ話。
マユのために更に自分を磨いていくことを誓うたっくん。プレゼントにもらった靴を履いて駆け出していく。そしてSide-Bへ。
あの靴で軽快に駆ける足元。少しずつカメラのアングルが上がっていき、そこには痩せた男性の姿(=鈴木辰也)が。
たっくんは別人のように変わった…と見せかけて本当に別人でした、というオチです。
原作を知っている人からすれば「なるほどそう来たか」、原作を知らない人からすれば「マユへの強い思いがここまで変えたのか!」というところでしょうか。

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3.映画と原作の比較

細かい違いはあるものの、基本的には原作に忠実に描かれていました。

» 以下ネタバレあり

タックのくだり、入院、数学専攻と物理専攻と言った原作の様々な伏線もそのままです。

大きく違うのは結末です。映画ではマユとふたりのたっくんが一堂に会します。
美弥子が辰也の名を呼ぶ原作のラストではインパクトが弱いと考えたのでしょうか。
確かにSide-AとSide-Bのたっくんは別人だと一瞬で確実に理解させるにはふたりを会わせるのが一番でしょうね。原作のラストでは「呼び間違え?でも返事をしているからこの人は鈴木辰也?どういうこと?」と混乱する可能性もあるかと思います。
個人的には「真実はマユのみぞ知る…マユ、恐るべし」という原作の衝撃がなくなってしまうことが残念に思います。

原作の場合、マユは夕樹と、辰也は美弥子と過ごすクリスマスイブで終わります。
二組のカップルには、この先も幸せな日々が続いていくのかな?というラストです。
一方映画の先を考えると…自分が二股を掛けられていたと知ったら、一途で真面目な夕樹はどうするでしょうか。それでもなおマユを好きでいられるのでしょうか。マユとの別れを選び、女性不信に陥ってしまわないでしょうか。
まぁマユのことなので上手く立ち回って二股がばれないようにするのかも知れませんね。
クリスマスイブに彼女を放って元カノのところに駆けつけた辰也と、美弥子の今後の関係も気になります。
「あいつも二股かけてたんだ」辰也のそんな報告を聞いて美弥子は笑って許すような気もしますがどうでしょう。

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★他の作品についてはこちらから→舞台と原作の比較:舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?

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