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小説家が本を売る方法を探しに:額賀澪 著『拝啓、本が売れません』

投稿日:2019-02-26 更新日:

手に取って最初に思ったことは「あ、これ小説じゃなかったのか」でした。
本を売るために奮闘する書店の話でも、作品を生み出すのに四苦八苦する作家の話でもありません。
「本を売る方法」を求めて作家自身があちこちを巡るノンフィクションでした。

目次

  1. 額賀さんが取材された方々
  2. SNSだけでなくサイトを作ろう
  3. 売れる表紙とは何か?
  4. 結局売れる本とは
 

1.額賀さんが取材された方々

本作で額賀さんが取材されたのは下記の5人です。
編集者、書店員、ブックデザイナーと本に関わる仕事をされている方だけでなく、Webや映像といった周辺の領域の仕事をされている方も登場します。

第二章 とある敏腕編集者と、電車の行き先表示

三木一馬さん(元電撃文庫編集長、ストレートエッジ代表取締役社長)
高橋弥七郎 著『灼眼のシャナ』、鎌池和馬 著『とある魔術の禁書目録』と言った大ヒット作品を世に送り出してきた編集者です。

第三章 スーパー書店員と、勝ち目のある喧嘩

松本大介さん(さわや書店フェザン店・店長)
外山滋比古 著『思考の整理学』、相場英雄 著『震える牛』と言った本がベストセラーになるきっかけを作った書店員さんだそうです。
さわや書店は岩手県内を中心に展開している書店チェーンで、タイトルや著者名を隠して本を売る『文庫X』の取り組みでも話題になりました。

第四章 Webコンサルタントと、ファンの育て方

大廣直也さん(株式会社ライトアップ・Webコンサルタント)
ライトアップはサイバーエージェントのコンテンツ部門のメンバーが中心となって設立されたIT企業で、メールマガジンの編集をはじめ、Webコンテンツの制作や社員研修など多岐に渡るサービスを提供されています。

第五章 映像プロデューサーと、野望へのボーダーライン

浅野由香さん(カルチュア・エンタテインメント株式会社・映像プロデューサー)
カルチュア・エンタテインメントはTSUTAYAでお馴染みのカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループの企業で、映像・出版・音楽といった分野の企画・製作を行っています。

第六章 「恋するブックカバーのつくり手」と、楽しい仕事

川谷康久さん(ブックデザイナー)
「ブックカバーに革命を起こした」と評されるデザイナーで、『MdN2017年12月号』では「恋するブックカバーのつくり手、川谷康久の特集」という記事が掲載されました。

2.SNSだけでなくサイトを作ろう

「Webの世界でも、文章を書けるって武器なんですよ」

(本文より)

第四章では額賀さんのWebサイトを作ろうという話になります。
情報の発信であればSNSで十分なのではとも思われますが、SNSは「あくまでコミュニケーションツールであり、情報の蓄積には向いていない」とのこと。

確かに言われてみるとその通りだと思います。
私はSNSでの発信はしておらず見るだけですが、移り変わりも速く、必要に関わらず流れてくる情報も多いと感じます。あとから振り返って探すのも大変ですし。

実際に出来上がった額賀さんのWebサイトも見ましたが、作品毎に試し読みやインタビュー、書店での注文に必要な情報などが分かりやすくまとめられていました。

額賀 澪 公式サイトへ

3.売れる表紙とは何か?

第六章では売れる表紙を求めてデザイナーの元へ向かいます。
確かに本に興味を持つきっかけとして表紙(とタイトル)の果たす役割は大きいと感じます。
本も人間と同じで、長く付き合う(次の作品も読みたいと思う)には中身が大切ですが、数多の本の中から選ばれるには外見も影響すると思います。

本章の取材相手、川谷康久さんの手掛けた作品として、本文中で画像付きで紹介されていたのはこちらでした。

あげくの果てのカノン 1 (ビッグコミックス)

そして本文でタイトルのみ挙げられていたのがこちら。
読んだことはないのですが、確かにタイトルからすぐに表紙が思い浮かびました。

いなくなれ、群青(新潮文庫)

そしてこの2冊のイメージから私がもしかして…!と思ったのがこちらです。

世界の果ての、真ん中で。 (ちゃおコミックス)

絵の一部と化しているようなデザイン性の高いタイトルの描かれ方がよく似ています。
早速現物を確認してみたところビンゴでした。

(2019.03.04追記)
★作品紹介はこちら→やぶうち優 著『世界の果ての、真ん中で。』

4.結局売れる本とは

様々な業界の方が異なる角度から「本を売る方法」や「売れる本」について話していらっしゃいますが、結局ほぼひとつの答えにたどり着きます。

» 以下ネタバレあり

「わかったことは『まずは面白い本を作れ』ということですからね。青い鳥を探すチルチルとミチル状態ですよ」

(本文より)

最初から分かっていたような結末ではありますが、これは本に限らないことですよね。
相手が欲しいものを作る、作ったものを届けるべきところに届ける。誰より作った自分自身が自信を持つ。
そこにお客さんがいる限り、どんな仕事にも共通することだと思います。

また、本作の最後には『風に恋う』という作品が掲載されています。
こちらは出版社の垣根を越えて、次作の冒頭をまるまる一章も掲載してしまおうという仕掛け。
実は額賀澪さんのことはこれまで存じ上げず、本作ではじめて知りましたが、この仕掛けはずるいですね。
『風に恋う』も読まずにはいられなくなりました。

(2019.03.02追記)
★『風に恋う』の紹介と感想はこちら→部活動の光と影:額賀澪 著『風に恋う』

» ネタバレを閉じる

(2019.05.17追記)
★『拝啓、本が売れません』の中でプロットが紹介されていた作品→脈々と続くものの重さと向き合う:額賀澪 著『潮風エスケープ』

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