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『何度でも、紙飛行機がとどくまで』のタイムループをまとめました(ネタバレあり)

投稿日:2020-01-12 更新日:

※タイトル通り、ネタバレありの記事ですのでご注意ください。

★『何度でも、紙飛行機がとどくまで』の紹介はこちら→大城密 著『何度でも、紙飛行機がとどくまで』
交通事故をきっかけにタイムループに巻き込まれた明良と千花。タイムループから抜け出すためには付き合うきっかけとなった「あの日」を再現しなくてはなりませんが、失敗するごとにお互いの記憶を失っていきます。
結局本作で起きたタイムループは全部で7回。それぞれの周回での出来事を整理したいと思います。

目次

  1. 本来の時間
  2. まず千花と静子がタイムループする
  3. 明良がタイムループに加わる
  4. それぞれ別の人生を歩もうとする(6回目・明良4回目)
  5. タイムループの終わり(7回目・明良5回目)
  6. タイムループ中の変化
  7. タイムループ後の時間
 

1.本来の時間

2010年:高校生

出来事
5月27日小町美歩が暴行未遂に遭う。
5月28日「あの日」明良が教室の窓から千花の似顔絵を描いた紙飛行機を飛ばし、千花がそれをキャッチする。ここからふたりの仲が深まっていく。
静子、明良に告白しようとしていたが出来なかった。
  • 千花は2年A組の生徒。母親の絹香はフラワーアレンジメントの仕事で独立したばかり。
  • 明良は2年D組の生徒。足に怪我をしている。
  • サッカー部はインターハイ全国大会で準優勝する。
  • 宮国龍之介は怪我をしていない。

2020年:現在

出来事
 明良、千花、病院に向かう途中に事故に遭う。千花とお腹にいた赤ちゃん(男の子)は亡くなる。対向車を運転していた静子も亡くなる。
タイムループする。
2日後明良、千花と子供の死を知って亡くなる。
タイムループする。

明良、千花、ふたりの子供、静子が巻き込まれた交通事故をきっかけにタイムループがはじまります。

2.まず千花と静子がタイムループする

事故直後に亡くなった千花と静子が先にタイムループをはじめます。このとき明良はまだ生きているため、タイムループはしていません。

1回目

出来事
5月18日千花、過去に戻ってすぐ明良に会いに行く。
タイムループする。
  • 千花は2年A組の生徒。最初に声を掛けてきたのは綾乃。明良が夫だったことを認識している。
  • 明良は2年D組の生徒。足に怪我をしている。千花が妻だったことを認識していない。
  • 静子は2年D組の生徒。明良と千花が夫婦だったことを認識している。

2回目

出来事
5月18日千花、自分が時間を繰り返しているのではないかと気付く。
静子、自分が時間を繰り返していることに気付き、この世界では変わろうと決意する。
5月19日千花、2年D組を訪ねて明良の姿を確認する。
静子、2年D組を訪ねてきた千花に話しかける。千花が明良の記憶の一部を失っていることに気付く。宇崎に自分の置かれた状況を話し「タイムループ」について聞く。
5月28日「あの日」千花は時間通りに現れたものの紙飛行機が飛んでこない。
静子、紙飛行機を用意していた明良に告白する。明良は紙飛行機を飛ばさず。
タイムループする。
  • 千花は2年A組の生徒。最初に声を掛けてきたのは綾乃。明良の姿を思い出せない。母親の絹香はフラワーアレンジメントの仕事で独立したばかり。両親は離婚していない。
  • 明良は2年D組の生徒。足に怪我をしている。

3.明良がタイムループに加わる

事故の2日後に亡くなった明良もまたタイムループに加わります。この時点で先にタイムループをはじめていた千花、静子とは2周回分の差があります。

3回目(明良1回目)

出来事
5月18日天気は晴れ。明良、過去に戻ってすぐ千花に会いに行く。
千花、明良に「私を捜さないで」と伝える。
タイムループする。
  • 千花は2年A組の生徒。明良の姿も名前も思い出せない。
  • 明良は2年D組の生徒。足に怪我をしている。千花が妻だったことを認識している。

4回目(明良2回目)

出来事
5月18日天気は雨。明良、自分が時間を繰り返しているのではないかと気付く。
5月19日明良、2年A組を訪ねるがそこに千花はいない。2年生の全クラスを確認しても千花はいない。宇崎と静子に自分の置かれた状況を明かす。宇崎から「タイムループ」のことを聞く。月本家を訪ねるがそこは石野家になっており千花もいなかった。
糸、未来の夫がいるはずのD組を訪ねるが、記憶にあるギプスをはめた生徒はいない。廃棄予定のプリントをもらって紙飛行機を折る。
5月20日
木曜日
「紙飛行機大量散布事件」校内に撒かれた大量の紙飛行機から、明良は千花が同じ学校にいることを知る。小町美歩は学校を休んでいたため、静子がメールで連絡を取る。放課後、明良は宇崎の家で一緒に『アイアンマン』のDVDを観ながら購買の特大チキンカツサンドを食べる。千花の母親、月本絹香について調べたものの見付からない。
糸、校内に紙飛行機をばらまく。松葉杖の生徒を見掛け未来の夫が同じ学校にいることを知る。
5月21日2年生全体に聞き込みをしたが、千花を知っている人はいない。宮国龍之介が自転車にひき逃げされて足に怪我をしたことを知る。夜、小町美歩が襲われる。
糸、紙飛行機に書かれたメッセージを受け取る。呼び出された先に現れたのは宮国龍之介。話をしているうちに龍之介は未来の夫ではなく、自分達が誰かにはめられたことに気付く。
5月22日、23日他の高校の生徒も調べたが、ここでも千花を知っている人はいない。23日、サッカー部が敗退。
5月24日小町美歩を襲った犯人がマンションから飛び降りる。学校では緊急の全体集会が開かれる。明良、舞台上で千花に呼びかける。
糸、紙飛行機を机に入れたのは有喜斗だが、メッセージを書いたのは有喜斗ではないことを聞く。有喜斗、糸に告白する。舞台上で「つきもとせんか」に呼びかけている「とびしまあきら」という違う学年の生徒が自分の未来の夫だと悟る。
タイムループする。
  • 千花は藤見糸になっている。1年B組の生徒。最初に声を掛けてきたのは有喜斗。実家は「フジミフラワーショップ」。両親は保育園に入る前に離婚しており、旧姓は月本。
  • 明良は2年D組の生徒。足に怪我をしている。千花の姿を思い出せない。

千花を見つけられなかった明良でしたが、タイムループが生じたことで同じ学校の中に千花がいることを確認出来ました。

5回目(明良3回目)

出来事
5月18日天気は激しい雨。明良、宇崎と静子に自分の置かれた状況を明かす。
5月19日糸、小町美歩に会いに行くが会えず(たぶん静子の仕業)。自分の本当の現在の記憶がほとんど消えていることに気付く。放課後有喜斗が糸の実家の店を手伝う。
5月20日
木曜日
明良、サッカー部の練習をしばらく休むことにする。小町美歩に護衛を申し出たところ、小町より紙飛行機に警告が書かれた手紙を受け取ったことを聞く。紙飛行機に書かれた字から、未来の妻が同じ世界にいることを知る。
5月21日小町が予備校のトイレで襲われる。間一髪のところで明良が駆けつけて小町は無事、犯人は捕らえられた。明良は顔に怪我を負う。
5月20~23日のどこか糸、有喜斗に自分の置かれた状況を明かす。
5月23日サッカー部が敗退。宮国龍之介は自転車にひき逃げされて怪我をしていた。
5月24日糸、小町を救ったという明良の姿を確認しにいく。
5月28日「あの日」明良は少女の似顔絵を描くものの、その紙は静子の手によって丸めて教室の窓から投げられてしまった。似顔絵を描かずに紙飛行機を飛ばしたものの未来の妻は現れない。
有喜斗、紙飛行機を受け取りに向かう糸に告白する。糸も有喜斗を選ぶ。自分の似顔絵が描かれ、丸められた紙を拾う。
タイムループする。
  • 千花は藤見糸になっている。1年B組の生徒。最初に声を掛けてきたのは有喜斗。実家は「フジミフラワーショップ」。本当の誕生日は4月1日だが、未熟児で生まれたため4月2日にずらした。
  • 明良は2年D組の生徒。足に怪我をしていない。千花の姿も名前も思い出せない。

4.それぞれ別の人生を歩もうとする(6回目・明良4回目)

出来事
5月18日糸、小町美歩に会うが特に何もせず。有喜斗からの告白のような言葉を受け、ここからふたりの仲が深まっていく。
明良、未来の妻を探すのではなく好きなように生きていこうと決める。小町美歩に注意を促す。小町を襲った男にも警告する。
5月23日サッカー部は試合に勝つ。明良も出場。
 小町が襲われる事件は起きなかった。有喜斗、自転車にひき逃げされて足を怪我する。
5月28日有喜斗、糸に告白する。ふたりは付き合い始める。
明良、静子の似顔絵を描いた紙飛行機を飛ばす。ふたりは付き合い始める。
 サッカー部は全国大会準優勝。明良もプロからの誘いを受ける。
翌年春糸の母、フラワーアレンジメントの仕事をはじめる。
 糸、2年生に進級。クラスは2年D組。生徒会に入る。
明良は3年D組。宇崎と静子とは違うクラスになる。
5月糸、よく分からないが調子が悪い。10日間学校を休む。
5月28日糸、有喜斗に自分の置かれた状況を話し別れを告げる。2年D組の窓から紙飛行機を飛ばす。
明良、静子の「また繰り返すことになる」という言葉から彼女もまた同じ時間を繰り返していることを知る。紙飛行機に手を伸ばす。
タイムループする。
  • 千花は藤見糸になっている。1年B組の生徒。最初に声を掛けてきたのは有喜斗で、名前で呼び合う仲。実家は「フジミフラワーショップ」。
  • 明良は2年D組の生徒。足に怪我をしていない。宇崎とは特に関わらない。

この周回では最長となる1年以上の時を過ごしています。1回目の5月28日、明良は自ら違う未来を選択し、「あの日」と同じ紙飛行機を使って静子に告白しています。一方の千花=糸も有喜斗から告白されており、ふたりが別の相手と付き合いはじめた日になりました。
ふたりはそれぞれ順調な生活を送っていると思われましたが、2回目の5月28日が近付くにつれて違和感が大きくなっていき、もう一度やり直すことを決めました。

5.タイムループの終わり(7回目・明良5回目)

出来事
5月18日明良、戻ってきて静子が泣いているのを見る。静子もタイムループしていることを確信し、静子には近づかないことにする。宇崎に自分の置かれた状況を明かす。
5月19日?明良、小町美歩に注意を促す。サッカー部を退部する。
5月24日
月曜日
明良、机に折りたたまれた紙飛行機が入っているのを見つける。放課後に宇崎と図書館で作戦会議を行い、以下の事実が明かされる。
・未来の妻は先にタイムループしており、明良と周回が2周以上違う。
・明良、未来の妻の名前=千花と、その由来がキンセンカ=誕生日である3月31日の誕生花であることを思い出す。
・ここは千花が3月31日に生まれなかった世界。
・3月31日の誕生花をキンセンカとしている本で、4月1日の誕生花はクロッカス。クロッカス=ギリシャ語で糸という意味であり、未来の妻は1学年下の藤見糸だと分かる。
5月28日「あの日」明良、静子から告白され、以下の事実が明かされる。
・静子が事故に遭った相手の車を運転していた。
・4回目(明良2回目)のタイムループで宇崎を明良に話しかけさせたのは静子。
・明良と千花が失敗した場合、静子の記憶はなくならない。
・4回目(明良2回目)のタイムループで千花が藤見糸になっていることに気付いた。
・宮国龍之介に怪我をさせたのは静子。
明良、紙飛行機を飛ばす。真っ直ぐ糸に向かって飛んで行った紙飛行機を糸がキャッチする。
元の世界に戻る。
  • 千花は藤見糸になっている。1年生。実家は「フジミフラワーショップ」。
  • 明良は2年D組の生徒。足に怪我をしていない。
  • 静子は前周回での失敗により明良の姿を思い出せなかった。

6.タイムループ中の変化

「未来を変えたいという思いは本当に世界に届くの」

(本文より、静子の言葉)

静子が望むのは自分が明良と一緒に生きていくことと明良の幸せであり、タイムループ中に起こる変化もそれが反映されています。
本来の明良は足の怪我によりサッカー部を引退せざるを得なくなりますが、5回目(明良に取って3回目)のタイムループからは怪我をしていません。6回目(明良4回目)のタイムループではサッカー部のエースのひとりとして活躍し、プロからの誘いを受けるほどになっています。
一方の千花の状況は悪い方向に変わっているように見えます。明良から遠ざけたいという静子の願いを受けてか、4回目(明良2回目)のタイムループから誕生日が1日後ろにずれて(3月31日→4月1日)名前が変わります。加えて未熟児だったことで(未熟児であることは元の世界でも同じようですが)更に誕生日をずらして(4月1日→4月2日)下の学年になっています。また、必ずしもマイナスとは限りませんが、両親が離婚し母子家庭となっています。

小町美歩の事件に関しては、4回目(明良2回目)のタイムループでは最悪の結末を迎えますが、その後は明良と千花がそれぞれ変えたいと動いたことで発生を防ぐことが出来ています。
逆に宮国龍之介に関しては静子が動いたことで、怪我をさせられるという悪い方向に変わってしまいました。

7.タイムループ後の時間

タイムループを経て戻った2020年は元の2020年とは異なるものでした。

  • 明良、千花、子供ともに生きている。
  • 明良、千花ともにタイムループの記憶が残っている。
  • 子供は息子ではなく娘になった。
  • 静子はそもそも存在していない。

一方で変わらないこともありました。宇崎はタイムループを繰り返していたときと携帯の番号が同じで、変わらず映画好きで、明良の置かれた状況についてもすぐ理解したようです。
タイムループ時とは異なり友達として過ごしてこなかったふたりでしたが、今からでも友情を築くことは出来る、というラストがいいなと思いました。

俺は知っている、未来も過去も変わる。

(本文より)

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