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映画、主題歌、そして小説:『空の青さを知る人よ』

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私は映画は観ておりませんが小説版を読み、それと合わせて映画の主題歌を聴きました。今回は小説版の感想を中心に紹介したいと思います。

目次

  1. 映画:『空の青さを知る人よ』
  2. あらすじ
  3. 主な登場人物
  4. 主題歌:あいみょん『空の青さを知る人よ』
  5. 小説:額賀澪 著『小説 空の青さを知る人よ』
 

1.映画:『空の青さを知る人よ』

2019年10月に公開された、監督・長井龍雪さん、脚本・岡田麿里さん、キャラクターデザイン・田中将賀さんの『超平和バスターズ』によるアニメーション映画です。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』と同様に埼玉県秩父市を舞台としています。
声は吉沢亮さん(金室慎之介/しんの)、吉岡里帆さん(相生あかね)、若山詩音さん(相生あおい)、松平健さん(新渡戸団吉)といった方々が務められました。

2.あらすじ

高校2年生の相生あおいは秩父の街で姉・あかねとふたりで暮らしています。両親を亡くして以来13年、あおいの親代わりとして生きてきたあかね。高校を卒業したら一緒に上京すると約束していた恋人・金室慎之介と別れ、地元に残って就職したあかねに対してあおいは感謝と共に複雑な気持ちを抱いています。
高校を卒業したら東京でバンドをやるというあおいはある日、練習場所にしているお堂で高校生の姿の慎之介である“しんの”に出会います。そして街には音楽イベントのゲスト歌手のバックバンドとして慎之介が戻ってきたのでした。
昔のしんのと今の慎之介、大きく変わってしまった姿に困惑するあおい。あおいがしんのに惹かれる一方で、あかねと慎之介もお互いに特別な気持ちを持ち続けていて…不思議な形の三角関係が描かれます。

3.主な登場人物

金室 慎之介(かなむろ しんのすけ)

31歳のギタリスト。あかねの高校時代の恋人。高校卒業後、ミュージシャンを目指して上京。それ以降街には戻っていなかったが、新渡戸団吉のバックバンドとして13年振りに戻ってくる。

しんの

18歳、高校生の姿の慎之介。慎之介が街に戻るのと同じタイミングで現れた。“しんの”は慎之介のあだ名でもある。

相生 あかね(あいおい あかね)

31歳。高校時代に慎之介と付き合っており卒業後一緒に上京する約束だったが、両親の死により街に残ることを決める。市役所勤務。

相生 あおい(あいおい あおい)

あかねの妹で、17歳の高校2年生。幼い頃に慎之介達のバンドを見てベースを始めた。高校を卒業したら上京しようと考えている。

新渡戸 団吉(にとべ だんきち)

音楽イベントのゲストとして招かれた演歌歌手でご当地ソングの大家。

中村 正道(なかむら まさみち)

慎之介とあかねの同級生で、あだ名はみちんこ。高校時代はバンドでドラムを担当していた。市役所勤務で音楽イベントを企画。バツイチで、あかねに恋愛感情を抱いている。

中村 正嗣(なかむら まさつぐ)

正道の息子で小学5年生。あだ名はツグ。大人びたところのある少年。

大滝 千佳(おおたき ちか)

あおいの同級生。成り行きでイベントを手伝うことになる。

4.主題歌:あいみょん『空の青さを知る人よ』

映画『空の青さを知る人よ』の主題歌があいみょんさんによる同名の楽曲です。この主題歌『空の青さを知る人よ』は慎之介の目線で書き下ろされた楽曲で、作中では慎之介のソロデビュー曲という位置づけになっています。「赤く染まった空」「空の青さ」と言った言葉をはじめ、作品の世界とリンクした歌詞の楽曲です。

そんな、恥ずかしい歌詞だった。誰のことを歌った歌なのか、誰のための歌なのか、わかってしまうから余計に恥ずかしい。恥ずかしくて、とても苦しい。

(『小説 空の青さを知る人よ』より)

また、カップリング曲の『葵』が映画のエンディングになっており、こちらはあおいの目線で書き下ろされた楽曲だそうです。

5.小説:額賀澪 著『小説 空の青さを知る人よ』

映画の脚本を元に額賀澪さんが書き下ろした『小説 空の青さを知る人よ』は映画の公開に先駆けて2019年8月に発売されました。

私がこの作品を読んで一番に思ったのは、映画を原作としたノベライズなのに額賀さんっぽい作品だということです。額賀さんの書いた文章が額賀さんっぽいのは当然かも知れませんが、原作の世界観がぴったり合っていたのではと感じます。

「あたし達は、巨大な牢獄に収容されてんの」

(本文より、あおいの言葉)

盆地になっている秩父の街を巨大な牢獄と表現し、ここから出て東京でバンドをやると言うあおい。ただ街を出るのは夢を叶えるためという真っ直ぐな理由だけではありません。
両親を亡くした後、自分の面倒をずっと見てくれている姉・あかねに対する言葉に出来ない気持ち。あおいの持つ閉塞感と自分が姉の人生を狂わせてしまったのではないかという負い目。あかねのいつも微笑みを絶やさない姿もまた、あおいをもやもやとさせるのでしょう。

一方で、高校卒業と共に上京し、夢を叶えて戻ってこようと誓ったのになかなか上手くいかずもがき続ける慎之介。久々の帰郷が演歌歌手のバックバンドとしてであることに複雑な思いを抱いています。
素直になれなくて拗らせてしまって、器用に生きることは出来なくて。そんなふたりは額賀さんの作品に出てきそうな人物だと思いました。

そしてあおいと慎之介とは対極の存在が高校生のしんの。何だって出来ると思っている高校生のしんのの姿がふたりに取ってどれだけ眩しかったことでしょう。しんのと接することであおいも、そして慎之介自身も変わっていきます。
あおいは段々としんのに惹かれていきます。でもしんのは実在しているけれど実在していないはずの存在。加えて大切な姉の思い人です。叶えることの出来ない、叶えてはいけない恋とあおいがどう向き合うか…最後のシーンにあおいの成長が感じられます。

あとがきによると映画は登場人物達の視点が交錯するのに対し、小説はあおいを主人公に時折慎之介の視点が入る形となっています。また、小説版独自の設定や映画と異なるシーンも作られているそうです。

「井の中の蛙大海を知らず されど空の青さを知る」
タイトルにもなっているこの言葉。様々な生き方をしている登場人物全員を肯定してくれる、そして読者の背中をも押してくれる言葉だと思いました。

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