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マーク・トウェイン 著『アダムとイヴの日記』

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河出書房新社の『恋って何ですか? 27人がすすめる恋と愛の本』で北村薫さんが紹介されていた『アダムとイヴの日記』を読みました。
★本作の他、『恋って何ですか?』で取り上げられている作品の紹介→『恋って何ですか? 27人がすすめる恋と愛の本』で紹介されている本

目次

  1. 作品概要・あらすじ
  2. アダムとイヴの違い
  3. ふたりの思いとすれ違い
 

1.作品概要・あらすじ

旧約聖書に記された最初の男女・アダムとイヴがつけていた日記、という作品です。前半がアダムの日記、後半がイヴの日記の構成で、いずれも右のページに本文、左のページにイラストが載っています。
解説文によるともともとは『アダムの日記』『イヴの日記』と別々に描かれた作品だったものの、作者のマーク・トウェインさん自身が合本としての出版を希望したそうです。

日本語版は大久保博さんが訳されたものが出版されています。私は図書館で福武書店と書かれていたものを予約したのですが、回ってきたのは何故か旺文社のものでした。『恋って何ですか?』の北村さんの紹介文を読むにイラスト含め内容はいずれも変わらないようなのでいいのですが…
なお2020年1月には『恋って何ですか?』を出した河出書房新社からも発売されました。

(福武書店版)
(河出書房新社版)

アダムとイヴの出会いからはじまり、ふたりの楽園での生活、木の実を食べたことによる楽園追放、カインとアベルの誕生…と旧約聖書の『創世記』に基づいたエピソードが描かれています。

2.アダムとイヴの違い

アダムの日記は全体に淡泊で文庫の1ページに収まる分量になっています。時には1行だけしか書かれていない日もありますが、特に前半は毎日のように日記をつけている様子がうかがえます。
対してイヴの日記は長く、文章も抒情的です。星を綺麗だと思ったり、火をはじめて見たり、恐怖心を抱いたり…彼女の考えや感じたことが詳しく書かれています。

ふたりの子供達はアダムの日記にのみ登場しています。アダムはカインのことを「イヴが捕まえてきた新しい生き物」「どこを探しても同じような生き物は見つからない」と綴り、その生き物が成長する様子を観察しています。
一方イヴの日記には子供達のことは書かれていませんが、アダムの日記に新しい生き物を可愛がっていることが書かれ(アダムはそんなイヴを訝ります)、ふたりの差が感じられます。

3.ふたりの思いとすれ違い

アダムが創られ、その後イヴが創られた(本作ではイヴが「自分はアダムの肋骨から創られた」と言っていることがアダムの日記に描かれています。肋骨からというのは『創世記』に従っていますね)のでアダムの日記→イヴの日記という順番になるのは当然なのでしょうが、この並び順が作品をより魅力的にしていると思います。
アダムはイヴのことを邪魔だ、勝手についてくる、よくわからないと綴り、彼の日記だけ読むとイヴのことを嫌っていたのかと思いますが、イヴの日記を見る限りはそうでもなさそうなことが分かります(もちろんイヴの日記だってあくまで彼女の視点であり、こちらが事実だとも言い切れませんが)。嫌よ嫌よもなんとやら、でしょうか。

またふたりの日記を読み比べるとふたりのすれ違いというか、ちょっとかみ合っていないような様子も感じられます。上述の子供達への接し方もそうですし、イヴが物に名前を付ける話なんかもふたりの捉え方が異なっています。

それでもお互いにお互いしかいない世界です。ふたりが相手を大切に思う気持ちがそれぞれの日記の終盤に書かれています。
特に(『恋って何ですか?』で北村さんも触れていましたが)最後の一行は秀逸ですし、その前のイヴの願いにもぐっとくるものがありました。

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