目次
1.作品情報
舞台:ミュージカル『四月は君の嘘』
製作:東宝/フジテレビジョン
観劇:2022年5月@日生劇場、7月@配信
「ヒューマンメトロノーム」と言われる程正確な演奏で数々のピアノコンクールで優勝していた有馬公生。母の死をきっかけにピアノの音が聞こえなくなり、ピアノからも遠ざかっていました。
高校3年生になった4月、公生は同い年のヴァイオリニスト・宮園かをりと出会います。かをりの演奏を聴いたことで、モノトーンだった公生の世界は再びカラフルに色付き始めるのですが…
原作:『四月は君の嘘』
著者:新川直司
出版社:講談社
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2.舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?
私自身は舞台を観てから原作を読みましたが、物語の結末を知らないのであれば「原作を先に読んだほうがよい」、物語の結末が分かっているのであれば「舞台を先に観たほうがよい」と考えます。
理由1:結末を予感させる舞台のオープニング
舞台のオープニングは(素敵なシーンなのですが)物語の結末を予感させるものとなっているため、結末を知らないのであれば原作を先に読んだ方がよいと考えます。
理由2:舞台は公生とかをりの物語
原作も公生とかをりの物語ではありますが、舞台では特に公生とかをりに焦点をあてた形になっています(舞台と原作の比較は後述)。
当然のことながら原作には舞台にないエピソードも多く、公生の成長や他の登場人物についてもより深く描かれています。舞台を観た後で原作を読んでも新鮮な気持ちで楽しむことが出来ると思います。
3.舞台と原作の比較
★原作と舞台の対応表はこちら→ミュージカル『四月は君の嘘』と原作の場面対応表
主人公達の年齢
一番の違いは年齢だと思います。原作は中学3年生だったのに対し舞台は高校3年生になっていました。中学生でも高校生でも主人公達の苦悩と成長、青春のきらめきは描けると思うので、キャストの年齢を考えると中学生は難しいということでしょうか。
ただ公生にピアノの音が聞こえなくなった時期はほぼ変わらないと見られるので、舞台の方が3年ブランクが長いことになります。全くピアノに触れていなかったということではないにせよこの差は大きく、舞台の公生が音楽の道に戻るのは原作以上に厳しいように思います。
登場人物
原作の主な登場人物のうち瀬戸紘子、相座凪、斉藤は舞台に登場していません。
井川絵見、相座武士は舞台に登場しますし、それぞれ公生に対して並々ならぬ思いを持っていることは分かりますが、その背景までは描かれていません。
» 以下ネタバレあり
原作の椿は憧れの先輩だった斉藤と付き合うことになりますが、斉藤が登場しないため舞台の椿は(本人が気付いていないだけで)公生一筋になっています。
紘子と凪が登場しないことで、かをりの心を動かした「くる学祭」の演奏や公生が「もう一度一緒に弾いてほしい」と伝えるシーンも出てきません。
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公生のコンクール
公生が参加するコンクールの回数も異なります。
» 以下ネタバレあり
原作ではかをりの手術の日の「東日本ピアノコンクール」本選の前に、予選落ちした「毎報音楽コンクール」、「東日本ピアノコンクール」の予選を経ています。一方舞台ではいきなりかをりの手術の日の「東日本ピアノコンクール」となります。
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その他
原作にあって舞台にないシーンはたくさんありますが、個人的にポイントだと思うのは、①公生と椿の雨宿り、②公生が渡との会話の中でかをりのことを「宮園さん」と呼ぶところ、③かをりが嘘をついた理由、でしょうか。
» 以下ネタバレあり
いずれも登場人物達の想いに関するシーンです。
①は椿の「あんたは私と恋をするしかないの」が出てきません。ただ、最後の「背後霊」発言は舞台にもあるので、椿の想いは(鈍い)公生にも伝わっているのではと思います。
②は公生が渡に「僕は宮園さんがとても好きだよ」と伝えるシーンです。中学生らしい、公生の真っ直ぐな想いが込められた言葉だと思います。舞台に同様のシーンはないですが(そもそも公生はかをりを「君」としか呼んでいないはず)、『君が聞こえる』の中で「愛してる」と歌っていますね。
③について、原作のかをりの手紙では、椿が公生のことを好きだったから公生を紹介してほしいとは頼めなかった(ので、渡が好きだと嘘をついた)ということが語られています。かをりの手紙は椿の「あんたは私と恋をするしかないの」より後ではありますが、勝手に気持ちをばらすのはよくないのでは…。
一方、舞台では嘘をついたということしか語られていません。原作の手紙をすべて盛り込むと舞台としては冗長になるように思いますし、公生とかをりも高校生、そこは語る必要がなかったのかなとも思います。
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原作を読んでみて、原作の魅力そのままの舞台だったと感じました。青春のきらめきが感じられる曲、エネルギーに溢れた曲、あたたかくて大切な気持ちが詰まった曲…それぞれの楽曲も魅力的で、素敵な舞台でした。
★他の作品についてはこちらから→舞台と原作の比較:舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?