目次
1.作品情報
舞台:ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
企画制作:TBS/ホリプロ/梅田芸術劇場
観劇:2017年1、2月@TBS赤坂ACTシアター、2019年2月@東京国際フォーラム ホールC
原作:『ロミオとジュリエット』(Romeo and Juliet)
著者:ウィリアム・シェイクスピア
『ロミオとジュリエット』の日本語訳はたくさんありますが、私がはじめに読んだのは松岡和子さんの訳(ちくま文庫)です。
他にも小田島雄志さん訳(白水Uブックス)、中野好夫さん訳(新潮文庫)を読みました。
(2019.03.31追記)
★3つの訳の紹介はこちら→『ロミオとジュリエット』の日本語訳比較
2.舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?
私自身は舞台を観てから原作を読みましたが、舞台を先に観てよかったと思いましたので、この作品については「舞台を先に観たほうがよい」とします。
理由1:原作は戯曲
ご存知の通り『ロミオとジュリエット』自体が戯曲(既存の恋愛物語をシェイクスピアが翻案したもの)です。
ミュージカルでも展開は分かりやすく、事前に原作を読んでおく必要は特に感じませんでした。
逆に原作では台詞とト書きにない情景は自分で想像しながら読むことになりますので、舞台で観ないと分かりにくい部分もあると思います。
理由2:純粋な恋の輝きの魅力
敵対関係にある家に生まれながら、出会って一目で恋に落ちたロミオとジュリエット。
ふたりの究極の恋の物語であることは原作も舞台も変わりませんが、より純粋でよりきらめいているのは舞台だと感じました。
また原作では性的な意味合いを持った冗談が散見されるところがちょっと苦手でした。
理由3:両家の争いによる犠牲
ロミオとジュリエットの死をもってモンタギュー家とキャピュレット家の争いには終止符が打たれます。
ただ原作の方が犠牲が多く、この点でも舞台の輝きが強いと感じました。
3.舞台と原作の比較
原作と舞台で大きな流れには違いはありません。
(2019.03.26追記)
★原作と舞台の対応表を作りました→ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』と原作の場面対応表
ふたりの恋の背景
» 以下ネタバレあり
ふたりが一目で恋に落ちるのは同じでもその背景には違いが見られます。
まずロミオですが、舞台では『いつか』という曲で歌われるように本当の恋人、自分の運命の人を探しています。原作でも恋に恋しているような状態ではあるようですが、そこにはロザラインという具体的な女性が出てきます。
ジュリエットもまた舞台では自分の運命の人を求めており、パリスからの結婚の申し込みに対して「結婚だけは自分の好きな人としたい」と猛反発します。一方原作では唐突な結婚話への反発はなく「お会いしてみます」というスタンスです。
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登場人物の違い
» 以下ネタバレあり
原作ではティボルトがジュリエットに思いを寄せている描写も、キャピュレット夫人と関係を持っている描写もありませんでした。舞台のティボルトは単に喧嘩っ早いだけではなく、深みのある、影を抱えた人物として描かれていると思います。
キャピュレット夫妻の間に愛はなく、ジュリエットはキャピュレット夫人の不義の子という設定も原作には見られません。
舞台では役名のある登場人物が減っており、そのひとりにロミオの従者バルサザーがいます。バルサザーはロミオにジュリエットの死を伝えます。舞台でこの役目を担うのはベンヴォーリオで、『どうやって伝えよう』というベンヴォーリオの見せ場となる楽曲と繋がります。
逆に舞台で増えた登場人物として「死」が挙げられます。原作にはロミオに毒を売る薬屋が出てきますが、舞台の「死」は毒を与えるだけでなく物語全体に横たわる影として重要な役どころとなっています。
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争いの犠牲
» 以下ネタバレあり
原作ではジュリエットの眠る墓にまずパリスが現れ、続いてロミオが駆けつけます。ロミオとジュリエットの関係を知らないパリスは、墓を開けようとするロミオを見咎めます。
ロミオはどうせ死ぬつもりで来たのだとパリスを相手にしようとしませんが、パリスはその場を引かず、ふたりは闘うことになります。ここでパリスは絶命。ロミオはティボルトだけでなくパリスまでも手に掛ける結果になってしまいます。
また原作ではモンタギュー夫人も息子が追放された悲しみにより亡くなっています。
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東宝版のスマホをはじめとした現代的演出についてはかなり好みが分かれると思いますが、一瞬の恋の輝きが素晴らしい楽曲で彩られた舞台になっています。
機会があれば宝塚版も観てみたいなと思います。
★他の作品についてはこちらから→舞台と原作の比較:舞台を観る前に原作を読んだほうがいいか?