やぶうち優さんの代表作のひとつである『水色時代』、私が読んだのは大人になってからです。
(コミックスは絶版だったため文庫版で読みましたが、今なら電子書籍版があるんですね)
目次
1.作品概要
『水色時代』は大きく4つの作品からなります。
女の子同士、先輩後輩、恋と友情といった人間関係。林間学校、文化祭、修学旅行、体育祭、受験といったイベント。
ごく普通の女の子の小学6年生から中学生までの日々と揺れる気持ちが丁寧に描かれています。
水色時代
『ちゃお』に掲載。小学校編、中学校編からなる本編です。
新水色時代
『ちゃお』に掲載。主人公の書いた小説という設定で、本編とは少し違う話になっています。
水色時代―12歳の季節―
『小学六年生』に掲載。小学校編の続編です。
水色時代を過ぎても「十九歳の地図」
『プチコミック』に掲載。短大生になった主人公が描かれます。
2.作品の魅力
友達とぶつかったり、嫉妬したり、先生に逆らったり、体形を気にしたり、好きな人に素直になれなかったり。もちろん時代が違うので今とは違うこともありますが、等身大の女子が描かれているなと思います。
「まだ」「もう」の話や、バレンタインの持ち物検査、フォークダンスの描写、女子3人組の微妙な関係なんか思い当たる節があるのではないでしょうか。
3.『水色時代』とは
子供と大人の間、真っ白な子供時代と青春の間を表した言葉です。
大人でも子供でもない微妙な年頃が表現された綺麗なタイトルだと感じます。
おとなじゃないけど子供じゃない
(本文より)
「青春」ってゆーのにもまだ早い
たとえていうなら
まっ白な子供時代から
すこしずつ
「青春」の青に染まってゆく…
その途中の
ほんのちょっとの間の
「水色」のとき――
4.登場人物の名前は主に京王線の駅名から
『水色時代』には名前だけも含めると50人近くの人物が出てきます。
その名前について見ていきたいと思います。
紹介欄には登場する作品(『新水色時代』『12歳の季節』『水色時代を過ぎても』)を記載しています。未記載の場合は『水色時代』に登場します。
京王線(相模原線、高尾線)
駅番号 | 駅名 | 登場人物 | 紹介 |
KO01 | 新宿 | ||
KO02 | 初台 | ||
KO03 | 幡ヶ谷 | ||
KO04 | 笹塚 | 笹塚 | 優子の中学校の教員。 |
KO05 | 代田橋 | 代田橋 | 優子の中学校の教員。 |
KO06 | 明大前 | ||
KO07 | 下高井戸 | ||
KO08 | 桜上水 | さくら | 12歳の季節:優子の小学校の教員。 |
KO09 | 上北沢 | 上北 | 12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。名前のみ登場。 |
KO10 | 八幡山 | ||
KO11 | 芦花公園 | ||
KO12 | 千歳烏山 | ||
KO13 | 仙川 | 仙川万里 | 優子の友人。 |
KO14 | つつじヶ丘 | ||
KO15 | 柴崎 | 柴崎 | 優子の中学校の同級生。 |
KO16 | 国領 | ||
KO17 | 布田 | 布田 | 優子の中学校の同級生。 |
KO18 | 調布 | ||
KO19 | 西調布 | ||
KO20 | 飛田給 | 飛田智子 | 優子の友人。 |
KO21 | 武蔵野台 | 武蔵野 | 12歳の季節:優子の小学校の同級生。 |
KO22 | 多磨霊園 | ||
KO23 | 東府中 | ||
KO24 | 府中 | ||
KO25 | 分倍河原 | ||
KO26 | 中河原 | 中河原暢子 | 優子の友人。 |
KO27 | 聖蹟桜ヶ丘 | ||
KO28 | 百草園 | ||
KO29 | 高幡不動 | 高幡多可子 | 優子の友人。 |
KO30 | 南平 | 南平 | ブラスバンド部員。 |
KO31 | 平山城址公園 | 平山るみ子 | 優子の友人。 |
平山 | ブラスバンド部員(イラストから男性と見られる) | ||
KO32 | 長沼 | 長沼博士 | 優子の幼馴染。 |
KO33 | 北野 | 北野深雪 | 優子の友人。 |
KO34 | 京王八王子 | 八王子 | 優子と同じ塾。北野と同じクラス。 |
KO35 | 京王多摩川 | ||
KO36 | 京王稲田堤 | 稲田 | ブラスバンド部員。 |
堤 | ブラスバンド部員。 | ||
KO37 | 京王よみうりランド | ||
KO38 | 稲城 | ||
KO39 | 若葉台 | 若葉 | 新水色時代:ブラスバンド部員。 |
KO40 | 京王永山 | 永山和弘 | 水色時代を過ぎても:優子の小説の担当。 |
永山 | 新水色時代:ブラスバンド部員。 | ||
KO41 | 京王多摩センター | ||
KO42 | 京王堀之内 | 堀之内 | ブラスバンド部員。 |
KO43 | 南大沢 | 南 | 12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。 |
大沢 | 12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。 | ||
KO44 | 多摩境 | ||
KO45 | 橋本 | 橋本識人 | 優子の友人。 |
橋本さん | 優子の小学校のクラスメイト。名前のみ登場。 | ||
KO46 | 府中競馬正門前 | ||
KO47 | 多摩動物公園 | ||
KO48 | 京王片倉 | 片倉リョーコ | 優子の友人。 |
KO49 | 山田 | 山田 | 優子と同じ塾。 |
KO50 | めじろ台 | ||
KO51 | 狭間 | 狭間英紀 | 新水色時代:優子の先輩。ブラスバンド部員。 |
狭間 | ブラスバンド部員(優子3年時に登場しており狭間英紀とは別人) | ||
KO52 | 高尾 | ||
KO53 | 高尾山口 |
井の頭線
駅番号 | 駅名 | 登場人物 | 紹介 |
IN01 | 渋谷 | ||
IN02 | 神泉 | ||
IN03 | 駒場東大前 | ||
IN04 | 池ノ上 | ||
IN05 | 下北沢 | 北沢 | 優子の中学校の同級生。名前のみ登場。 |
IN06 | 新代田 | ||
IN07 | 東松原 | 東 | ブラスバンド部員。 |
松原 | ブラスバンド部員。 | ||
IN08 | 明大前 | ||
IN09 | 永福町 | 永福麻菜美 | 12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。 |
IN10 | 西永福 | ||
IN11 | 浜田山 | ||
IN12 | 高井戸 | 高井戸 | 優子の中学校の同級生。名前のみ登場。 |
IN13 | 富士見ヶ丘 | ||
IN14 | 久我山 | 久我山 | 博士の後輩。 |
IN15 | 三鷹台 | ||
IN16 | 井の頭公園 | ||
IN17 | 吉祥寺 |
都営新宿線
何名かの名前は京王線に乗り入れている都営新宿線の駅名からつけられていました。
駅番号 | 駅名 | 登場人物 | 紹介 |
S07 | 小川町 | 小川優子 | 新水色時代:優子の先輩。 |
S08 | 岩本町 | 岩本 | 水色時代を過ぎても:優子の隣人。 |
S11 | 森下 | 森下 | 12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。名前のみ登場。 |
S15 | 大島 | 大島 | 新水色時代:優子の中学校の生徒。名前のみ登場。 |
では、残りの人物は?
ここまででどの駅にも該当しなかったのが下記の5人です。
- 河合優子:主人公。
- 阿部正:優子の姉の担任。
- 土井くん:優子の中学校の同級生。名前のみ登場。
- 井川:優子の担任。
- 宮内冬紀:優子の友人。
主人公である優子についてはやぶうちさんご自身がWebサイトで述べられています。
「優子」は本名で、「河合」も本名の名字を元につけたそうです。
では残りはどこから来たのでしょう。
名前しか登場していないならまだしも、宮内冬紀(みやう)のような出番の多いキャラクターを適当に名付けたとは考えにくいと思います。
日本国内には宮内駅という駅もありましたが(土井駅と井川駅もあります)、わざわざ他の路線から付けたのでしょうか。
ここでまたWebサイトを確認すると、『水色時代』登場人物の名付けについてやぶうちさんは下記のようにも述べられていました。
キャラの名前は、電車の駅名から現実にありそうな苗字っぽいものを選んでつけてます。あと当時お手伝いしてくれていたアシスタントさんからも使わせてもらったりしました。
(やぶうち優公式サイト「Utopia」 - やぶうちの作品についての質問より)
http://www.dab.hi-ho.ne.jp/yabuuchi/QandA_ys.htm
京王線近辺で見つからなかった名前は、アシスタントさんから来ているのかも知れませんね。
★同じく登場人物の名前が鉄道しばりであるやぶうちさんの作品の紹介→
魔法少女のリコーダーと人名っぽい駅名:やぶうち優 著『まほちゅー!』
(2019.03.28追記)
札幌に舞い降りる恋と地下鉄の駅名:やぶうち優 著『ひとひらの恋が降る』
★『水色時代』から20年、現代の中学生の悩みが描かれた作品→やぶうち優 著『世界の果ての、真ん中で。』