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等身大の女の子と京王線の駅名:やぶうち優 著『水色時代』

投稿日:2019-03-19 更新日:

やぶうち優さんの代表作のひとつである『水色時代』、私が読んだのは大人になってからです。
(コミックスは絶版だったため文庫版で読みましたが、今なら電子書籍版があるんですね)

目次

  1. 作品概要
  2. 作品の魅力
  3. 『水色時代』とは
  4. 登場人物の名前は主に京王線の駅名から
 

1.作品概要

『水色時代』は大きく4つの作品からなります。
女の子同士、先輩後輩、恋と友情といった人間関係。林間学校、文化祭、修学旅行、体育祭、受験といったイベント。
ごく普通の女の子の小学6年生から中学生までの日々と揺れる気持ちが丁寧に描かれています。

水色時代

『ちゃお』に掲載。小学校編、中学校編からなる本編です。

新水色時代

『ちゃお』に掲載。主人公の書いた小説という設定で、本編とは少し違う話になっています。

水色時代―12歳の季節―

『小学六年生』に掲載。小学校編の続編です。

水色時代を過ぎても「十九歳の地図」

『プチコミック』に掲載。短大生になった主人公が描かれます。

2.作品の魅力

友達とぶつかったり、嫉妬したり、先生に逆らったり、体形を気にしたり、好きな人に素直になれなかったり。もちろん時代が違うので今とは違うこともありますが、等身大の女子が描かれているなと思います。
「まだ」「もう」の話や、バレンタインの持ち物検査、フォークダンスの描写、女子3人組の微妙な関係なんか思い当たる節があるのではないでしょうか。

3.『水色時代』とは

子供と大人の間、真っ白な子供時代と青春の間を表した言葉です。
大人でも子供でもない微妙な年頃が表現された綺麗なタイトルだと感じます。

おとなじゃないけど子供じゃない
「青春」ってゆーのにもまだ早い

たとえていうなら
まっ白な子供時代から
すこしずつ
「青春」の青に染まってゆく…

その途中の
ほんのちょっとの間の

「水色」のとき――

(本文より)

4.登場人物の名前は主に京王線の駅名から

『水色時代』には名前だけも含めると50人近くの人物が出てきます。
その名前について見ていきたいと思います。
紹介欄には登場する作品(『新水色時代』『12歳の季節』『水色時代を過ぎても』)を記載しています。未記載の場合は『水色時代』に登場します。

京王線(相模原線、高尾線)

駅番号駅名登場人物紹介
KO01新宿
KO02初台
KO03幡ヶ谷
KO04笹塚笹塚優子の中学校の教員。
KO05代田橋代田橋優子の中学校の教員。
KO06明大前
KO07下高井戸
KO08桜上水さくら12歳の季節:優子の小学校の教員。
KO09上北沢上北12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。名前のみ登場。
KO10八幡山
KO11芦花公園
KO12千歳烏山
KO13仙川仙川万里優子の友人。
KO14つつじヶ丘
KO15柴崎柴崎優子の中学校の同級生。
KO16国領
KO17布田布田優子の中学校の同級生。
KO18調布
KO19西調布
KO20飛田給飛田智子優子の友人。
KO21武蔵野台武蔵野12歳の季節:優子の小学校の同級生。
KO22多磨霊園
KO23東府中
KO24府中
KO25分倍河原
KO26中河原中河原暢子優子の友人。
KO27聖蹟桜ヶ丘
KO28百草園
KO29高幡不動高幡多可子優子の友人。
KO30南平南平ブラスバンド部員。
KO31平山城址公園平山るみ子優子の友人。
平山ブラスバンド部員(イラストから男性と見られる)
KO32長沼長沼博士優子の幼馴染。
KO33北野北野深雪優子の友人。
KO34京王八王子八王子優子と同じ塾。北野と同じクラス。
KO35京王多摩川
KO36京王稲田堤稲田ブラスバンド部員。
ブラスバンド部員。
KO37京王よみうりランド
KO38稲城
KO39若葉台若葉新水色時代:ブラスバンド部員。
KO40京王永山永山和弘水色時代を過ぎても:優子の小説の担当。
永山新水色時代:ブラスバンド部員。
KO41京王多摩センター
KO42京王堀之内堀之内ブラスバンド部員。
KO43南大沢12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。
大沢12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。
KO44多摩境
KO45橋本橋本識人優子の友人。
橋本さん優子の小学校のクラスメイト。名前のみ登場。
KO46府中競馬正門前
KO47多摩動物公園
KO48京王片倉片倉リョーコ優子の友人。
KO49山田山田優子と同じ塾。
KO50めじろ台
KO51狭間狭間英紀新水色時代:優子の先輩。ブラスバンド部員。
狭間ブラスバンド部員(優子3年時に登場しており狭間英紀とは別人)
KO52高尾
KO53高尾山口

井の頭線

駅番号駅名登場人物紹介
IN01渋谷
IN02神泉
IN03駒場東大前
IN04池ノ上
IN05下北沢北沢優子の中学校の同級生。名前のみ登場。
IN06新代田
IN07東松原ブラスバンド部員。
松原ブラスバンド部員。
IN08明大前
IN09永福町永福麻菜美12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。
IN10西永福
IN11浜田山
IN12高井戸高井戸優子の中学校の同級生。名前のみ登場。
IN13富士見ヶ丘
IN14久我山久我山博士の後輩。
IN15三鷹台
IN16井の頭公園
IN17吉祥寺

都営新宿線

何名かの名前は京王線に乗り入れている都営新宿線の駅名からつけられていました。

駅番号駅名登場人物紹介
S07小川町小川優子新水色時代:優子の先輩。
S08岩本町岩本水色時代を過ぎても:優子の隣人。
S11森下森下12歳の季節:優子の小学校のクラスメイト。名前のみ登場。
S15大島大島新水色時代:優子の中学校の生徒。名前のみ登場。

では、残りの人物は?

ここまででどの駅にも該当しなかったのが下記の5人です。

  • 河合優子:主人公。
  • 阿部正:優子の姉の担任。
  • 土井くん:優子の中学校の同級生。名前のみ登場。
  • 井川:優子の担任。
  • 宮内冬紀:優子の友人。

主人公である優子についてはやぶうちさんご自身がWebサイトで述べられています。
「優子」は本名で、「河合」も本名の名字を元につけたそうです。

では残りはどこから来たのでしょう。
名前しか登場していないならまだしも、宮内冬紀(みやう)のような出番の多いキャラクターを適当に名付けたとは考えにくいと思います。
日本国内には宮内駅という駅もありましたが(土井駅と井川駅もあります)、わざわざ他の路線から付けたのでしょうか。

ここでまたWebサイトを確認すると、『水色時代』登場人物の名付けについてやぶうちさんは下記のようにも述べられていました。

キャラの名前は、電車の駅名から現実にありそうな苗字っぽいものを選んでつけてます。あと当時お手伝いしてくれていたアシスタントさんからも使わせてもらったりしました。

(やぶうち優公式サイト「Utopia」 - やぶうちの作品についての質問より)
http://www.dab.hi-ho.ne.jp/yabuuchi/QandA_ys.htm

京王線近辺で見つからなかった名前は、アシスタントさんから来ているのかも知れませんね。

★同じく登場人物の名前が鉄道しばりであるやぶうちさんの作品の紹介→
魔法少女のリコーダーと人名っぽい駅名:やぶうち優 著『まほちゅー!』
(2019.03.28追記)
札幌に舞い降りる恋と地下鉄の駅名:やぶうち優 著『ひとひらの恋が降る』

★『水色時代』から20年、現代の中学生の悩みが描かれた作品→やぶうち優 著『世界の果ての、真ん中で。』

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