一寸先はなんとやら：『超短編！　大どんでん返し』

目次

1. 概要・収録作品
2. 「どんでん返し」の種類
3. 印象に残った作品

１．概要・収録作品

小学館の『STORY BOX』に掲載された作品を文庫にまとめた一冊です。2000字、文庫で4ページ程の作品30編が収録されています。
テーマはタイトルの通り「どんでん返し」で、予想外の展開や小説ならではの驚きが描かれています。

収録作品（収録順）

２．「どんでん返し」の種類

本書の作品は大きくはふたつに分けられるのではと思います。
ひとつは「どんでん返し」という言葉からまず思い浮かべられる、思いもよらないストーリー展開の話。中には話が複数回ひっくり返るような作品もありました。もうひとつは予想外の出来事が起きている訳ではなく、読み進めるうちに自分が勘違いをしていたことに気付く、いわゆる叙述トリックを含むような作品。こちらの方が「やられた！」感が強いですね。
ただ、文庫4ページ程という短編だからか、30編の中には何が起きたのかよく分からない作品もありました。

３．印象に残った作品

夏川草介 著『不運な患者』

夏川さんの作品が読みたくてこの本を読んだと言っても過言ではないのですが、期待を裏切らない作品でした。
「どんでん返し」というテーマのせいかホラーのような作品、明るいとは言えない結末も多い中、本作は幸せなラストを迎えます。あっと驚くような展開ではないかも知れませんが、「どんでん返し」もしっかり感じられます。
タイトルから予想出来るように舞台は病院。『神様のカルテ』でお馴染みの色黒で大柄なあの人が出てくるのもファンには嬉しいポイントではないでしょうか。

北村薫 著『激しい雨』

本書で唯一のエッセイです。こちらもあっと驚くような展開とはちょっと違う「どんでん返し」ですが、北村さんの願いが込められたあたたかい作品です。

乾くるみ 著『なんて素敵な握手会』
長岡弘樹 著『最後の指導　『教場0 刑事指導官・風間公親』外伝』

いずれも読み終えたあとにもう一度読み返したくなった作品です。再読時には違った物語が見えてきます。

『人を憎んで罪を憎まず』下村敦史

一般的にありたい姿として言われるのは「罪を憎んで人を憎まず」ですが、その逆を描いた作品です。現代社会では実際に起こり得そうな話と思います。

タイトル通り超短編なので、通勤時間や隙間時間に手軽に読める作品です。普段あまり読まない作家さんの作品に触れられるのもアンソロジーのいいところですね。

超短編！ 大どんでん返し

posted with ヨメレバ

小学館文庫編集部 小学館 2021年02月05日

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